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「クジラ」から学ぶ、超長期投資における基本スタンス

 金融市場(資本市場)における「クジラ」とは何のことかご存じでしょうか?
この「クジラ」とは、金融市場における大口投資家のことを指しており、豊富な資金力を背景に市場に大きな波を起こすことからそう呼ばれています。日本では、年金積立金の管理及び運用を行う「年金積立金管理運用独立行政法人(Government Pension Investment Fund、以下、GPIF)」「日本銀行」「ゆうちょ銀行」「かんぽ生命保険」「共済年金」を5頭のクジラと表現します。

世界最大級のクジラはどこにいる?

さて、世界最大の「クジラ」はどこの国にいるかご存じでしょうか? 
イメージでは、世界をけん引するだけでなく現在は経済も絶好調なアメリカ、もしくは、人口の観点から考えるとアメリカもそうですが、エマージング(新興国)市場の雄である中国やインドのような気もします。

 さて、世界の年金基金ランキング(2021年)によると、なんと世界で最も大きいクジラと呼ばれているのは、日本のGPIFです。次いで、2位はノルウェー、3位が韓国、米国はまさかの4位となっています。
 1位の日本はともかく、2位以下は少し意外な結果ではなかったでしょうか?
 さて今回は、このランキングから1位、2位、4位の「クジラ」について、少し深堀をしてみたいと思います。 

第1位 年金積立金管理運用独立行政法人:GPIF(日本)

 日本の公的年金(厚生年金と国民年金)のうち、年金積立金の管理・運用を行う独立行政法人(公的機関)になります。わたしたちが毎月支払っている国民年金などの掛け金を国内外の株式や債券などに投資することで将来の年金給付の財源となるため、国内外の株式や債券などで分散運用しています。
 資産規模は190兆円以上と世界最大のファンドと言われており、以前は安全な国債への投資比率が高かったのですが、株式への投資比率を高めようという議論がなされた結果、現在のような資産配分になりました。

第2位 ノルウェー政府年金基金(グローバル):GPF-G(ノルウェー)

 基金の正式名称は「政府年金基金グローバル」で、ノルウェーが北海で石油を発見した後に設立され、将来的に枯渇の可能性のあるノルウェーの石油およびガス資源からの収益を油田資産を金融資産に転換して長期管理し、現在および将来の世代が石油の富から恩恵を受けることができるように、財政準備金および長期貯蓄計画としても機能するようになっています。
 ノルウェー政府年金基金は、ノルウェー王国のソブリン・ウエルス・ファンド(SWF)をいい「Government Pension Fund of Norway」と「Government Pension Fund Global(政府年金基金グローバル)」の二つに分けられます。前者は国内の株式市場に投資するので多くのノルウェーの大企業の筆頭株主となっていますが、ノルウェー政府年金基金のSWFという場合は、通常「政府年金基金グローバル」を指します。

第4位 カリフォルニア州公務員退職年金基金:CalPERS(アメリカ)

 米国のカリフォルニア州公務員退職年金基金(the California Public Employees’ Retirement System、CalPERS)をカルパースと呼び、1932年に設立された米国最大の公的年金基金になります。2000年代から投資を行っていた方ならばご存じかもしれませんが、運用姿勢は、これまでにも新興国株式やヘッジファンドへの投資といった歴史的に新しい投資戦略、資産クラス、および投資コンセプトにおいて公的年金基金の中で先駆者的存在であるといえます。その資金規模もそうですが、常に情勢を先取りしてきた優れた運用手法や突出した資金力から大きな影響力を持っているので、全世界の金融関係者から常にその動向が注目されています。また、機関投資家としてのカルパースは投資先企業の経営への介入なども行う、いわゆる「もの言う株主」の代表格でもあります。

最後に

 長期的な運用においては、短期的な市場の動向により資産構成割合を変更するよりも、基本となる資産構成割合を決めて長期間維持していくほうが、効率的で良い結果をもたらすことが知られています。
 GPIFの場合、厚生労働省が実施する財政検証の結果や厚労大臣から与えられた中期目標、並びに近年の経済情勢を踏まえて基本ポートフォリオを策定します。例えば、積立金の運用目標について「長期的に年金積立金の実質的な運用利回り(運用利回りから名目賃金上昇率を差し引いたもの)1.7%を最低限のリスクで確保することを目標とし、この運用利回りを確保するよう、基本ポートフォリオを定め、これに基づき管理を行うこと」とされています。このように、年金財政上必要な利回りを満たしつつ、最もリスクの小さいポートフォリオを選定した結果、先述の基本ポートフォリオとなっているわけです。
 超長期での運用を実施する年金運用に求められている運用スタイルを見れば、なぜ、つみたてNISAによる資産形成で株式投資”だけ”で大丈夫なのかというのが分かるのではないでしょうか。
 そのうえで、どのように投資をおこなうのかは個人の自由ですが、知識を知らないまま、もしくは、この考えを無視しての資産形成は目標を達成なしえないかもしれないということです。
 『現代ポートフォリオ理論』を学ぶのは機関投資家が行っている運用方法の理解を促し、『行動ファイナンス理論』を学ぶのは主に感情面への理解を促すことになります。だから、この二つを学ばずの投資はあり得ないと思うのです。