ここ数日、日経平均株価がバブル後最高値という報道が連日行われています。この局面をいわゆる投資のプロはどう見ていたのかを確認することで、私たちのようなごく普通の個人投資家が気付くべきことを書いてみます。
プロによる相場見通しについて
例えば、ある株価指数の月末時点が10,000ptだったとします。その時、投資のプロである証券会社が発表した来月中の想定レンジが9,100pt~10,400ptだったとしましょう。
そのくらい幅を持たせるなら「誰だってそんな見通し立てられるよ!」って思いますか?それとも「プロが言うんだからそうなんだろう」と納得しますか?
当然ですが、証券会社ではこの先、国内だけでなく海外で株価に影響を与えそうな経済指標や会合がいつ発表されるかを把握していますし、それに対して市場参加者がどうみるか(これを「市場コンセンサス」といいます)を予想して見通しを立てているのは、誰でも想像に難くないでしょう。

それでも「こんなに幅を持たすなんて…調査する意味あるの???」っていうご意見もあると思いますが、本当にそうなのでしょうか?
国内大手証券会社の株価想定レンジ(2023年5月末時点)

ある国内大手証券会社の日経平均株価の6月の予想レンジは、28,000円~32,000円でした。これを発表したのは6月1日(木)で、その前日である5月31日(水)の日経平均株価終値は30,887.88円でした。
実は、先ほど10,000円で例えたあのレンジと、この予想レンジ幅はほぼ同じです。そして、5月31日以降、金融市場では何も特別なことは起こっていません。それでも株価は、プロが予想したレンジを外れて大きく上昇しているというのが、“いまの相場”なのです。
毎日、情報をアップデートしていると気付きづらいのですが、たった半月前、なんなら6月5日(月)時点、発表からわずか3営業日の終値時点ですでに予想レンジを越えてしまっています。
そして、「レンジが広すぎる」とご意見があった方が想定していたレンジも超えてしまっているのではありませんか?
現状から言えること
まずは「その証券会社の調査力が足りないのでは?」という意見があるでしょう。しかし、最初に述べた通り、あの時点から株式市場に影響を与えるようなサプライズ的なことは何も起こっていませんし、あの時点での市場コンセンサスを全く無視したわけでもありません。せいぜいあるとするならば、行動ファイナンスでいう“アンカリングの罠”(最初に印象的な情報[5月末時点の日経平均株価の終値]に引きずられて、その後の意思決定[6月中のレンジ]に影響を及ぼす効果)にはまったかもしれないということくらいでしょう。しかし、これに関しては、プロほど有益な客観的情報を集められない私たちのような個人投資家の方が陥る確率が高そうです。
次に、私のセミナーでは必ず言っていることですが、“将来を当て続けることはできない”ということです。プロでさえ、たった2~3日先のことですら見誤るのです。
結局のところ、市場には“需給”という不確定要素が残っているからで、その背景には1つの事象に対してそれぞれ市場参加者の見方が異なっているからです。「コンピュータ売買ならば関係ないのでは?」と思うかもしれませんが、例えば、国内投資家は日経平均株価だけで判断すれるところを海外投資家は日経平均株価に加え、為替と併せた評価で判断するでしょうし、更には自国やそれ以外の投資先との相対評価で投資判断をしているので、海外投資家といっても地域や投資家ごとに状況が異なるのです。そして、これらが“需給”に反映されているのです。
最後に
何らかの突発的なイベントをきっかけとして相場が大きく変わることがありますが、現状、これといってそれにあたるようなことで思いつくものがないですよね?
だから、いまのこの状況はかなり難しい局面であるといえます。その証拠に、株式と債券、REITが1つの事柄に対して教科書通りではなく、それぞれの需給によって動いています。
実は、投資のプロが想定できないようないまの相場こそ、需給に忠実に従う“テクニカル分析が最も生きてくる相場”ではないかと思っています。
決して、プロの見通しがまったくあてにならないとも思っていませんが、
あまりに過信しすぎるのもどうかというのと、それだけ相場は難しいということをあらためて認識する良い機会でないかと思います。
私は預言者ではないのでこの先がどうなるかは分かりません。繰り返しにはなりますが、少なくともいまはプロでも難しい局面であることと、やはり相場を当て続けることは難しいということをチャートをみながら再認識しています。そして、長期分散投資による資産形成推奨者である私は、“どうして現状のポートフォリオにして運用したのか”を自問自答することで、無駄に慌てないように自制しています。
あなたはどう感じましたか?
