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ロボアドバイザー・AIファンドの実用性と今後の展望

 先日、「チャットGTPに投資ファンドを作らせたら、英国の人気上位10ファンドの運用成績をはるかに上回る実績を上げた」という記事をみました。その結果の真偽はさておき、そもそも「チャットGTP」の名前の由来はご存じでしょうか?

「チャットGTP」ですが、チャット[Chat]=おしゃべり(対話)、Generative=生み出す、Pre-trained=事前教育済み、Transformer=変換させるものという意味になるので、少し意訳すれば『事前学習させた内容から対話型で答えてくれるプログラム』という感じでしょうか?

 そこで、このような質問がありました。

『人工知能(AI)を活用し、資産運用を一任したり、助言をもらったりできる「ロボアドバイザー」というサービスや、AIファンド(資産運用アルゴリズムにAI(人工知能)を応用するタイプの投資信託)というものがあると知りました。こうしたテクノロジーを活用した資産運用について、以下の観点でご意見をお聞かせください。
 ・利用するかしないか、その理由
 ・実用性(現状どの程度導入・利用されているのか、実際に役に立つのか)
 ・今後の展望
以上です。』

この質問に私の経験を踏まえて回答してみたいと思います(あくまで筆者の意見になります)。

利用するかしないか、その理由

 現状は「しない」です。理由ですが、人工知能(AI)というとなんだかすごい感じがしますが、言葉のイメージと実際との乖離がまだ大きいのではないかと思っています。運用の世界での話ではありませんが、私はコールセンターなどで活用する「対話型AI」の導入経験があるので、その時の話をします。

 まず、対話をさせるにあたりAIを育てる必要があります。この育て方ですが、大きく分類すると以下の2つになります。

  ❶人が学習させるタイプ

  ❷自分で学習するタイプ

誰でも知っている企業がつくったAIをいくつか拝見させていただきましたが、正直、私たちが想像しているような理想の技術とは、まだまだ大きな乖離がありました。
 例えば、❶のタイプだと、結局のところ人間が学習させることからこの段階で人の考え方(ヒューマンバイアス)が入ってしまい、何らかの意図(偏り)が出てしまいます。一方、❷のタイプだと、膨大な時間と労力が必要で、それをひとつの部署で育てるほど悠長ではいられないという感じです。

 でも「それって対話型のはなしでしょ?」と思うかもしれませんが、運用の世界だけAIが飛び抜けているとはとても思えないので、基本的にはどのタイプであってもそう大差はないと思っています。なので、最初に「チャットGPTで投資ファンドを作らせたら…」という話についても偶然の域を出ないと思っている訳です。なぜならば、私が思う「チャットGPTのすごいところ」は、“まるでそれが真実のように会話(文章)をすらすら返してくる”だからです。

実用性(現状どの程度導入・利用されているのか、実際に役に立つのか)

 とあるファンドで「銘柄選定にAIを使っているというのを見たことがありますが、よっぽどAIをテーマにしたファンドのほうがパフォーマンスが良かった…なんてことがありました。また最近だと「ロボアド」のセミナーを聞いたことがありますが、先述の❶のタイプでした。要は人間では管理できないくらい、いろいろなデータを取り入れて…というものでしたが、逆に(すでにヒューマンバイアスがかかった)データが多く取り入れるのってどうなの…と思ってしまいます。

 昔からクオンツ運用(高度な数学的テクニックをコンピューター分析する運用)というのがありますが、個人向け公募ファンドで上手く運用できているイメージが全くと言っていいほどありません。本業でやっている方からすると「違う!」と言いたくなるかもしれませんが、投資信託を導入していた経験がある私の中では、いまのAIも従来のクオンツと大差ないと思っています。それに、歴史的にも「LTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)」の件もあるので・・・

 ※LTCM(Long Term Capital Management)
 1998年に経営危機が表面化した米国のヘッジファンド。1994年にノーベル経済学賞を受賞した2名を含むスタッフによって高度な金融工学理論を駆使して運用を行い、組成から数年間は驚異的なパフォーマンスを残すものの1997年のアジア通貨危機の煽りを受け、最終的には救済措置によって破綻はまのがれた2000年に清算されている。

今後の展望

 技術的にはもの凄い勢いで進化しているので、どうなるかわかりませんね。そのうち、いまのインデックスファンド並みに話題になるようなものが出てくるかもしれません。

 もしも、そんなすごい技術を開発することができたとして、私が運用会社の立場であれば、技術はブラックボックスにして大勢に見せることなく(要は公募にせずに限られた投資家だけを相手にする私募にして)、最低購入金額とフィーを高く設定しますね。それでも運用会社の私も投資家もWin-Winでしょうから。。。

おまけ

 ということで、私は長期分散投資推奨者ですが、『ロボアド』についてはファンドラップ同様、運用コンセプト自体は悪くないと思うものの日本の投資環境面や現在の技術面を考慮すると、まだ肯定的な立ち位置ではありません。