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債券投資におけるリターン追及の危うさ

 

 債券投資の場合、債券を発行したところ(発行体)さえ破綻しなければ、とりあえず償還するまで持つことで元本を減らすことなく利益を得ることはできるので、ローリスク・ローリターンの金融商品だとテキストなどで学びます。だから、個人投資家における債券投資の場合は、株式のような売買を行うというより償還まで保有することを前提に考えています。そうなると最初に購入する際の利率(クーポンレート)が気になるわけですが、これが普通の利率より“高い”ということについて、整理をしてみたいと思います。

預金や債券などの考え方の基本(流動性と利率)

 はじめに金利に関わる金融商品(預金、債券)の考え方の基本ですが、当初の満期なり償還なりが、短期より長期のほうが利率(金利)は高くなります。

 お金を借りる側に立つと解りやすいのですが、長期間、お金を借りたい時にはなるべく長く貸してくれる方が、いちいち貸してくれる先を探す手間が省ける名メリットがあるので、短期より長期で貸してくれる方により高い金利を付けてあげます。
 一方、私たちの様な貸す側からすれば、お金を貸したことによって、好きな時にお金を動かせなくなるといった“流動性のリスク”をとったわけです。だから、そのリスクをとった分に対する金利の上乗せが付いたともいえます。

より高い利率を得るために

 債券投資を考えるにあたり、まず(自国の)国債を基準に考えるのが一般的になります。もしも、いま長期投資で考えているならば、新規発行される個人向け国債(変動10年)が分かりやすいでしょう。
 いま新規発行の『個人向け国債(変動10年)』[第161回変動金利型10年満期]だと利率は0.39%(税引き前)です。この利率では、いくら長期保有したとしても自分が求めるような資産を作るには程遠いなぁ…と直感でも分かるので、「もう少し高い利率の債券がないかなぁ…」と探してしまうのではないでしょうか?。
 もしもこの利率よりも高くしたいのであれば、「信用力を落とす」「自国を出る」「何らかの仕組み(条件)を受け入れる」というのが一般的です。

信用力を落とす

 まず、お金が必要である発行体としては、何の見返りもなく貸してくれるのが最もありがたいのですが、それではお金を貸してもらえません。だから、発行体は借りたい期間に対して利子を付けますが、その際、いずれ返済しなければならないことを考えると、なるべく低い利子に抑えたいわけです。
 一方、私たち貸す側からすれば、利払いと償還が決められたタイミングで確実に履行してもらいたいと願っています。要は、返済に対する信用力がどれだけあるのかが、ポイントになるわけです。

 さて、前置きが長くなりましたが、日本人にとって「自国を信用できない」という人は少数派でしょうから、最も信用力が高い発行体は「国債」になります。

では、国債の次に信用力が高いところを考えてみると、まずは世界的な大企業、その次は…という順番になるでしょう。このように発行体の信用力が下がれば下がるほど、信用力が高い発行体よりも高い利率を出すことで、発行体はお金を集めることができるようになっています。だから、私たち個人投資家は、信用力を落とすことで高い利率の債券に投資をすることができます。

自国を出る

 日本人にとっての基準は日本国内です。例えば、買い物をする場合、一般的に近所のスーパーで買い物をするでしょうし、ネットでの取り寄せるにしても海外サイトで直接というよりは、国内サイトを経由させるでしょう。同様に外食をする場合でも、イタリア料理を食べにわざわざイタリアまで行くことはなく、近くのイタリアンの店に行くでしょう。なにしろ、生活の基盤が日本だから、何をするにも基準は日本国内なのです。
 ただし、投資の場合は、買い物や外食と異なり簡単に基準となるところを変更することができます。
 債券の場合、日本の金利を基準に利率が考えられます。ということは、日本の金利より高い国で取り扱われている債券の場合、同じ種類の債券であっても利率が高くなっているということです。だから、日本とアメリカで同じ償還期限である国債が新規発行されたとすると、いまは金利が高いアメリカの国債の方が、利率が高くなるというわけです。

 ただ、ここで忘れてはいけないのは、私たちがいま、アメリカでなく日本にいるということです。日本にいる人がアメリカのモノを買おうとするならば、まず円貨を米ドルに両替するといった外国為替取引が存在します。これは、債券が償還された後も米ドルのまま使うのであれば別ですが、通常は日本円に両替するので、ここでも外国為替取引があります。
 債券自体は償還まで持てば利息が払われて投資額が戻ってくるのですが、海外市場での取引の場合は、外国為替取引が発生するという大きなリスクがあります(ちなみにこの件は債券もそうですが預金も同様です)。

何らかの仕組みを受け入れる

 最近、仕組債(EB債)やAT1債と何かと債券投資がらみで問題になっていますが、これらについて共通するのは、この部分です。
 ここでは、EB債やAT1債の説明は割愛しますが、先述のはなしまではイメージできたと思います。それらと比べて、利回りが高いとか、償還が短いなど私たちにとってメリットがあるように見えている場合、普通の債券に比べて、私たちが何らかのリスクを負わされているということに気付くべきです。

ちなみに、一般的にみられる条件としては、
  ・発行体が破綻したら普通の債券よりお金が戻ってくる順番が低い
  ・ある条件になったら予定した利率より低くなる
  ・ある条件になったら債券から別なものに変わる(変えられる)
  ・条件判定期間が長い(多い)
 など
というのがあります。

最後に

 今回は利率を高める方法について述べていますが、言い換えれば、利率を高めるためにどのようなリスクをとっているのかを書きました。これ以外にも、さらには投資詐欺で使われやすい「私募債」の場合は、公募債と比較すると情報量が少ないことから、投資には慎重になるべきでしょう。
 債券投資において、株式のようにアクティブ運用(積極的運用)する方法もあります。実は、株式に比べると情報の非対称性があるとして、債券投資ではパッシブ運用よりアクティブ運用の方に妙味があると言われています。とはいえ、これはプロの世界のはなしであって、個人投資家が債券運用するにあたりプロレベルを求めるのは難しいうえ、債券1銘柄当たりの購入金額もそこそこ必要になるので、実は債券こそファンドで保有した方がよいのではないかと考えます。