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新NISAは「シン・ニーサ」になれるか

 今年もほぼ半分が過ぎました。「来年のことを言うと鬼が笑う」という諺がありますが、SNSの話題も来年から始まる新NISA制度のことが多くなってきたので、少しこの点について話をしてみたいと思います。

2024年、新NISAスタート

 2024年1月1日(予定)でスタートする新NISAですが、従来の「NISA」と「つみたてNISA」の2つを併せたような制度になります。
 ところで、2014年にスタートした「NISA」ですが、もともとはリスク資産への資金呼び込みが目的となる制度で、2018年にスタートした「つみたてNISA」のような資産形成促進的な話は後付けされたものなのです。だから、その生い立ちを知らないと「資産形成になぜNISA?」みたいな話になったりするわけです。


 さて、これだけ“国の財源がないので税金で徴収する!”と言っているにもかかわらず、(現状)非課税期間を無期限するなどの制度変更のメリットが多い新NISAですが、これは“将来のための資産形成をしなさいよ!”という強烈なメッセージが出されていると思っています。そもそも、2019年 金融庁の金融審議会が公表した報告書にあった「老後2,000万円問題」にしても2,000万円で足りるかどうかはともかく、「誰もが足りない!」という危機感を金融機関との付き合いが希薄な方でも認識することに繋がりましたよね?要は、あれと同じなのです。

「新NISA」は「シン・ニーサ」になれるか

 制度そもものの説明などは他でもいろいろ情報が出ているので、そちらに任せるとして、言われているメリットについて考えてみたいと思います。
 まず、新NISAでは最大利用可能額までいった場合、現行NISAでは売却しても枠が戻らなかったのが、新NISAでは売却した分の購入時金額(簿価評価)の分だけ枠が復活します。次に期限が無くなるといった恒久化は大きなメリットがあるように見えます。さらに、投資金額の拡大についても成長枠とつみたて枠がありますが、いずれにせよ、枠が広がったことはいいことです。ただ、もう少し金額が広がってもいいと思うものの、一方で恒久化したこともあるので、そのバランスを欠くと税金がとれなくなることを気にしているのかもしれません。
 取り合えずはこれまでより改悪になった点はないので、以前の非課税制度よりは良くなったのではないかと思います。

気にすべきこととは

 まず、投資枠復活の件ですが、100万円(簿価)で購入したものが上昇して300万円(時価)で売却しても300万円の枠が開くわけでなく、当初購入時の100万円の分しか枠が復活しないということです。そして、売却したらすぐに復活するわけでなく、翌年以降に復活する仕組みのようです。ということは、売買回転には制限はないものの頻繁に売買すると枠が無くなるという点は以前と変わってはいません。
 次に恒久化になったことで、「なるべく早く枠を使い切った方が良い」という内容のSNSをみます。しかし、枠を使い切った後にもっと魅力的な投資対象商品が出てきた場合はどうするのでしょうか?普通ならば儲かっているモノを売却せずに、利益が出てないもしくは損をしてるモノを売却しようとしませんか?この場合は、まったくNISAの恩恵を受けることなく、資金拘束をしていたのと同じに結果になうだけでなく、特定口座にあれば損益通算できたのに…ということになりかねません。
 結局のところ、つみたてNISAの話をしている人のほとんどの発信は、なぜだか、利益が出る前提になっているんです。リスク商品に投資をしているのに楽観的なのはなぜでしょうか?
 それは「長期投資」と「複利効果」を根拠にしているようです。しかし、私が以前から説明していますがファンドのパフォーマンスに関して「複利効果」という考え方は本来ありませんし、「長期投資」に関してもリスク低減効果が得られるものではないことをコラム「初心者が気にすべき投資の視点とは」で説明した通りです。
 
 わざわざ、リスクを負って投資をするのに「損することをイメージするなんて!」と思われるかもしれません。しかし、損をしないわけではない以上、まったくそのことを無視してはいけないということです。現行NISAであっても新NISAであっても損をしている状況で売却すると何らメリットはありません!というか、損益通算ができないというデメリットがあるのと、投資初心者の方だと影響は少ないと思いますが、つみたて投資枠にしても成長投資枠にしても、管理銘柄や整理銘柄となっている上場株式や信託期間が20年未満もしくは高レバレッジ型・毎月分配型の投資信託は除外されているといった商品選択の幅が狭くなっているというデメリットもあります。

最後に

 『全力で満額で投資して最短で行わなければならない!』みたいな記述をSNS上ででみかけますが、必ずしもそうではないですし、なにしろ、人それぞれ状況が違います。だから同じ金融商品に投資するにしても、結局のところ「いつから始めたのか!」「いつまで続けられるのか!」「なにがしたいのか?」などによって話は変わってしまいます。だから、自分である程度、理解をすることが重要なのです。
 なぜならば、FP(ファイナンシャルプランナー)であっても収支のすべてに限らず、家族構成、家庭環境に至るまで何も包み隠さず話しているなんてことはないと思っているからです。

 別に難しい話を理解しないといけない!というつもりはありませんが、SNSの情報が全てではないですし、もし情報にも鮮度があるのならば、いつの情報なのか?ということも含めて判断できないと痛い目に合うかもしれないということです。例えば、Twitterなどで迷惑動画が炎上しますが、それが、いま起こっている動画なのか、デジタルタトゥーによる過去の動画なのかという疑問がありませんか?
 バズることが目的ならば、たとえ内容が古くても話題なりそうな動画をUpしたいと思っている人がいるように、投資に関する情報であってもその発信目的が分からない以上、受け取る側の選球眼が大事になるということです。