2024年1月1日より開始される新NISA制度のうち、成長投資枠対象の国内籍投資信託と上場投資信託(ETF)及び上場投資法人(REIT等)の第一弾が「(一社)投資信託協会」から公表されました。今回届出をした運用会社は41社、対象ファンド995本のうちETFが54本、それ以外の投資信託が941本で、最多は三菱UFJ国際投信の133本、三井住友トラスト・アセットマネジメントの103本、大和アセットマネジメントの92本と続きました。これを踏まえて、現時点での感想を述べてみたいと思います。
概略
国内籍の公募投資信託は約6,000本もあり『つみたてNISA』の対象ファンド選定時も投資初心者でも扱いやすい投信をその中からどう区分けするかが焦点になっていました。
そこで、2024年から始まる新NISAについては2月に金融庁が「成長投資枠で買える投信については、その目的にかなうよう、毎月分配型や信託期間が20年未満の商品などを除外する」という一定の要件を付けることにしました。
それに従い、投資信託協会(以下、投信協会)は成長投資枠の条件に合う投資信託を各運用会社から募り、この基準に基づいて選定した結果、今回公表された1,000本程度で、最終的には約2,000本が対象になるといわれています。

歴史的背景から読み取れること
新NISAの成長投資枠は「一般NISAの後継」などと言われますが、それは表面的な印象であって歴史的な背景を踏まえるとまったく別物だと思います。私のセミナーでもお話ししていますが、2003年に10年間の時限措置で導入された「優遇税制による証券取引に関する軽減税率」の終了に伴い、2014年1月に現行NISAはが導入されました。この軽減税率は「貯蓄から投資へ」の流れを促すことで経済を活性化することを目的としているものでした。だからNISA導入の狙いは基本的には終了した軽減税率と同じだったのです。
さて今回のはなしに戻ると、金融庁は「税制優遇で長期の資産形成を促すNISAにそぐわない」とコメントを出しています。だから、現行の一般NISAでは、買付が金額指定で購入できない一部の投資信託などは除外していているものの日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)の2倍の値動きになるレバレッジ型など国内籍の投資信託のほとんどが購入対象となっていたのに対し、今回の新NISAでは「成長投資枠」であっても現行NISAのような幅広さがなくなった理由はわかるでしょう。
新NISAの成長投資枠に採用される投資信託に条件が付与されるのは知っていましたが、利用者側になった現在では最終的に決まったものから判断すればよいと私自身思っていたので、採用条件のアップデートはしていませんでした。
ただ、この条件自体は当初から「個人の選択肢を狭める」といった指摘があったり、運用業界からは「条件が厳しすぎる」との声は上がっていて、運用会社では毎月分配型を隔月分配型に変えるといった小手先?の対応も行ったようです。一方、金融庁幹部は「価格が乱高下するレバレッジ型などが外れるのは当然。長期の資産運用に合わないケースが出てくれば、追加対応を考える必要がある」というコメントもあったようで、資産形成は資産形成でも短期に資産形成をすることは望ましいと思っていないことがうかがえます。どおりで「投資枠が復活する仕組みがOKなんだなぁ」と思いました。
公表内容の感想
正直、驚きました。例えば、先日のコラムでファンドの本数が多いと取り上げた「野村アセットマネジメント」は36本しかなく、そのうちインデックスファンドを除くと19本しかありません。同様に「日興アセットマネジメント」は15本中インデックスを除くと10本と、日本を代表する老舗の運用会社がほとんど採用されていません。第2弾、第3弾と発表されていくので最後までみないと分かりませんが、もう少し、最初から飛ばしてくると思っていたので。
一方、もうひとつの老舗である「大和アセットマネジメント」は想定通りの動きで、さらに増やすつもりか?と思ったりもします。その背景には最近の「大和アセットマネジメント」は節操がないというか、例えば、「ナスレバでつみたて」とか「日本株ファンド」と言ってたかと思ったら「インドインデックス!」になってみたりと…。販売したい気持ちが分からないわけではありませんが、あまりにも露骨過ぎて、“運用会社たるもの、きちんとルール通りの運用ができてなんぼ”と採用担当だった私からすると受け入れがたいレベルにあると思っています(それとパフォーマンスは連動しませんが…)。
これについては、外資系運用会社についても同様の傾向があるようで、各運用会社そのものの姿勢というよりは現社長の意向を強く反映しているのだろうと思います(そういえば、セゾン投信ももめてますね)。
インデックスはブームにのって各社乱立状態ですね。三菱UFJ投信とETFを組成した運用会社は分かりますが、それ以外はユーザー側からすると逆に分かりづらいと思います。ただ、ファンドだと、株式と違ってどこでも同じものが買えるわけではないので仕方ない面もあるのですが…。一方、アクティブファンドの中では、自分が導入したファンドだけでなく、残念ながら導入できなかったファンドもいくつか採用されていました。これをみると採用担当当時の眼は狂ってなかった!と自画自賛しています。ただ、是非とも取り入れてもらいたいようなファンドもまだまだいくつもあるので、もしもそれが今後も採用されないのならば、非常に残念です。
あと、外国債券で運用するアクティブ運用のファンドは対象外となっていると聞きます。恐らく、設計が複雑だと思われているからではないかと推測しますが、そうなるとパシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)社のような世界的にも超優秀な債券運用会社が入る余地がないのかと思ってしまいます。外国株式のアクティブ運用はOKなのに債券だとNOというのは、「債券」という商品の金融教育の仕方が間違っているせいではないでしょうか?最近の仕組債やAT1債も同様で、注目すべきは付帯条件であり、それを軽視するような教え方が問題ではないかと思います。本来、株式より債券の方がアクティブ運用によるα(超過収益)が取りやすく、それこそ債券も活用した資産形成には必要不可欠だと思うのです。なので、選別する際に、外国債券のアクティブファンドの中で“結果として”デリバティブ要素が高いモノはダメ!みたいな振るいをかけた上で、採用の可否を考えてもらいたいものです。
最後に
余談ですが、まず、現行のつみたてNISAでは、ファンドの運用コストである信託報酬率が一定以下であることなどの条件をクリアした金融庁に届出されている指定インデックスの投資信託新しいNISAのつみたて投資枠は、現行のつみたてNISAの対象商品と同様になる予定です。
現行の一般NISAにおいては、投資信託やETFに加えて、国内株式、外国株式、REITなど幅広い金融商品が対象となっており、制度としては各商品について対象条件を設けていません。
