2024年1月1日より開始される新NISA制度のうち、成長投資枠対象の国内籍投資信託と上場投資信託(ETF)及び上場投資法人(REIT等)が「(一社)投資信託協会」から順次公表されており、直近では2023年9月1日に更新されました。上場投信(ETF)や上場投資法人(REIT等)については、個人的にあまり興味がないので、投資信託(非上場)のデータを踏まえて、現時点での感想を述べてみたいと思います。
概略
国内籍の公募投資信託は約6,000本もあり、新NISAについては一定の要件を付けることで、最終的には約2,000本が対象になるといわれていますが、2023年9月1日時点で1,616本(うち、つみたて投資枠対象でもあるのが215本)となっています。そんななか、運用会社が申請はしたものの対象から取り下げたファンドもすでに10本ほど存在しています。
当該ファンドの運用会社サイトを確認したのですが、理由はともかく、取り下げたことをアナウンスしている運用会社には、それなりの誠意は感じます(とはいえ、申請されるためにバタバタしたことの裏返しの結果とも言えますが…)。

ここまでの申請状況から思うこと
今回(2023年9月1日)取り下げとなった「ダイワDBモメンタム戦略ファンド(ヘッジあり/ヘッジなし)」は、自分が買いたいか、買いたくないかは別にして、ほかとは違った運用戦略の分散として使いたいと思う人がいるかも知れなかったのに…と感じたりします。
投資信託の場合、結局のところ証券会社や銀行などの販売会社での取り扱いがなければ、そもそもNISAで買ってもらえる状態にもなっていないので、そうなると運用会社としては、なりふり構わずというか、一定の要件をクリアできるようマイナーチェンジをして申請してくるわけです。そうなると、似たり寄ったりの日本株ファンドや中国・インドなどの新興国ファンドなどが大量に残る一方、理由は不明ですが運用戦略の分散が出来るようなファンドがなくなるっていうのもどうなのか?という思いはあります。
一方、私たち利用者サイドとしては、品数が少ないよりも多いほうが選択肢が増えて良いわけで、そうなると、6,000本が2,000本になるかもしれませんが、結局、何を選んでよいか分からない状態と変わらず、何をもって選択するのかも明確でないまま、せっかくの成長投資枠なのに「株式のインデックスファンドを買っとけ!」と言わんばかりの情報だけでいいのか?とも思います。
『投資に関する税制優遇制度を作ったんだから、あとは自分でしっかり老後の資金を作っときなさいよ!』って、頭とお尻だけがあって、その途中が雑だよなぁ…と感じるのは、私だけでしょうか?
あることに気付いたので・・・
新NISAに関わらずですが、ファンドに投資をするにあたり、再投資効果(個人的にファンドには“複利”という発想がないと思っているので)を活用しようとしますよね。そうなると、購入するファンドから分配金を出さずに内部留保させているほうがよくて、でも出てしまったならば再投資すればよいと思っているはずです。NISAを活用すれば、分配金に税金がかからない…と思いますが、ここにまず1つの落とし穴があります。それは、分配金が再投資できるか、否かは、NISAを取り扱う金融機関次第だからです。分配金再投資するということは分配金で購入することと同じ意味なので、NISA枠の管理上、分配金再投資が出来るがNISA枠でなく、課税口座で同ファンドの再投資になるという金融機関があります。この点については、ファンド取り扱い本数同様、NISAでの分配金再投資時の取り扱いを確認しておく方が良いでしょう。
次に、今回の成長投資枠で採用されているファンドのなかに、そもそも再投資ができないファンドが含まれているということです。敢えてファンド名は出しませんが、ファンドとしては優秀だと思うので、どこかで脚光を浴びた際に「そんなこと知らなかった…」とか言われなければいいなぁ…とは思います。
それよりも、こういう細かな違いに対して、誰も教えてくれないというか、気付いてないというのも、結果的に「投資」を遠ざけてしまう一因なのではないかと思います。毎月分配だとアウトで隔月分配にすればOKな理由もよく分からないですし、暴落時に毎月分配によってキャッシュアウトしていたおかげで助かった面もゼロではなかったのではないかと思います。特に毎月分配型がブームが始まったのは、リーマンショック前だったのでその後のショック時には、“結果的に”助かったということもあったはずなのです(とはいえ、投資商品なのに下がること前提での商品設計をしているわけはないのですが)。
最後に
全般的に商品の見極め方が雑というか、「損と“感じた”≒悪い金融商品」のような構造になり過ぎていないかと思います。
仕組債にしてもEB債(他社株転換債)はやりすぎだと思いますが、日経デジタルクーポン債程度ならば、ボックス相場時においてある程度の収益を得るには悪い商品ではないと思いますし、AT1債でも目論見書に記載がないのは言語道断ですがAT1債そのものが悪い商品ではないと思います。そして、コストだけでインデックスファンド(それも先進国株式ファンド1択)というのも、あちらこちらでそれ以外はダメみたいになっていますが、あんなこと数字を比較すれば誰でも言えることなので「本当にそれで選んでいいのか?」と。
つみたて投資枠にはつみたて投資枠の、成長投資枠には成長投資枠の、といった頭を切り替えて何を選択すべきかを考えられる判断は持っていたいものです。
